本と対話と哲学と

テツドク!@東京のアーカイブ

2019年4月21日 三木清『人生論ノート』

日 時 : 2019年4月21日 14時~16時

場 所 : 東京ウィメンズプラザ(渋谷)

講 師 : 神戸 和佳子

テーマ : 『人生論ノート』を読む

参加人数 : 10人

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参加者のコメント

・『人生論ノート』という題名から想像していなかった難しい内容だったが、神戸さんがわかりやすい言葉で説明してくださったので、きちんと読みたいと思った。

・細かいニュアンスについての解説によって、点と点がつながったように思う。

・もっと深めてみたいこともたくさんあった。

・「幸福は人格である」の「人格」とは何か、そのあたりが今一つわからなかったので、もう少し議論出来たらと思った。

・一人で読むよりもいろいろな考え方が聞けたので、良かったです。

 

参加者からリクエストのあった哲学者・本・テーマ

アリストテレス形而上学』、カント『判断力批判』、オルテガニーチェ古代ギリシア哲学

 

★概要

満足度は88%で、まずまずの水準だったが、割高感(参加費が高いと感じた割合)が20%とやや高かった。

今回は講師の解説から対話・議論/質疑応答という流れではなく、講師の解説から参加者による感想発表というプログラム進行となった。

したがって、議論を深めたかった(50代男性)とか議論がもっとできればよかった(60代男性)、といった対話・議論の不完全燃焼を指摘する感想が見られた。

一方で、解説によって理解が深まったという声もあり、今回の進行のやり方が必ずしも失敗であったとはいえない。

ただ、対話の時間が取れなかったのは、テーマ設定のせいか、進行のやり方のせいか、もともと意図的(計画的)なものだったのか、意図せざるものだったのか、少し不明瞭であった感は否めない。

なお、毎回行っている懇親会に関しては、参加者によってはテツドクよりもその後の懇親会がメインになっている面も見受けられるので、そのあたりの位置づけ(懇親会はテツドクの延長線上であって、その逆ではない)は、明確にしておく必要があるかもしれない。

 

 

2019年1月27日 ヘーゲル『精神現象学』

日 時 : 2019年1月27日

場 所 : 大田区エセナ大田

講 師 : 中岡 成文さん(カフェフィロ)

テーマ : ヘーゲル精神現象学』を読む

参加人数: 10名

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参加者のコメント

・読めなかったヘーゲルが少しは読めるきっかけになりそうです。

・今思っていることが確信になりました。

・やはりとても難しかったです。

・やはり、ヘーゲルは1人で読んでもわかりません。先生のお話と参加者の方々のご発言を聞いて、少しわかりました。

 

参加者からリクエストのあった哲学者・本・テーマ

 

アリストテレス形而上学』、フロム『愛するということ』、ハイデガー存在と時間』、ニーチェドゥルーズ

 

★概要

 

満足度は100%で、とても満足も50%と過去の平均と比べても、かなりの高水準だった。

(特にとても満足度は高く、過去最高)

難しかったと感じた割合は50%とほぼ80%を超えていた過去のヘーゲルシリーズに比べ、ハードルは下がったとみられる。

満足度が高いわりに、コメント量が少ないのは、シリーズも7回を数え、参加者の間に共有できる水準が見いだせているのかもしれない。

先生の資料や解説のクオリティが安定しているので、参加者はある程度内容を予測しつつ講義に臨める面もある。

この予測可能性の高さが高水準の満足度とコメント量の少なさに反映しているとも考えられる。

シリーズ化の長所は、このように高水準のクオリティを安定して発揮できる点にあるとすれば、短所は参加者が固定化し、新鮮味や開放性が犠牲になってしまう点だと指摘できる。

 

 





 

2019年1月6日 鈴木大拙『無心ということ』

日 時 : 2019年1月6日 14時30分~16時30分

場 所 : ウィメンズプラザ東京(渋谷)

講 師 : 大熊 玄さん(立教大学

テーマ : 鈴木大拙『無心ということ』を読む

参加人数: 19名

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参加者のコメント

・意見の出し方、対応等、とても勉強になった。

・話を聞いているとわかったような気になる時とやはりわからないという気になったりすることの繰り返しだったです。

・議論の振り返りのために、専用のフェイスブック等(参加者のみ閲覧可)を設けて、議論をつなげてほしい。

大拙の言う無心は有心も何もない状態ではないことを知ることができて、とても良かった。

・いろんな日常の生活の話が出て、面白かったです。

・有心について関心が湧きました。

・様々な意見を伺えて、充実した時間でした。

・東洋系は難解。大熊さんのさばきにはいつも感心する。

・無心について様々な議論をしたのは生まれて初めて。科学技術との対比で議論してみたい。

・事前にテキストを読めるともっと考えが浮かんで、より深いディスカッションになったかも。

・時間があっという間で、楽しかったです。

・気後れしてしまい、発言できなかった。次回参加するときは、自分の考えをしっかり述べてみたい。

・言葉が区別を生む、と言う言葉が印象に残った。

・前半、もう少し焦点を絞った方が良かった。

 

参加者からリクエストのあった哲学者・本・テーマ

ギリシア哲学

マルクス・ガブリエル

鈴木大拙

アリストテレス形而上学

宗教哲学

関口存男

 

★概要

正月明けにもかかわらず、参加者19名と大勢集まった。

直近の東洋哲学、西田幾多郎第3回(2018年8月)も19名集まったことを考えると、日本の哲学に対して関心の高い層が増えていると言えるかもしれない。(ちなみに全体では過去34回の平均参加者数は13.3人)。

 

今回、評者は不参加だったので、詳細は不明だが、コメントの内容からは、参加者の意見が活発で、充実した内容であったことが伺える。

 

事前のテキストがあったほうが準備ができて、議論のハードルが下がるのでは、と言う意見があったが、以前に用意したテキストだけ取得して本番には不参加する人が相次いだため、現状では見送りになっている。

 

また、テツドクのフェイスブック等で参加者同士による議論の振り返りができる場をつくってはどうか、という意見があった。

検討の余地はあるが、管理面も含めて現状では難しいと思われる。

 

 

 

 

 

2018年12月2日ニーチェ『道徳の系譜学』

日 時 : 2018年12月2日 14時~16時30分

場 所 : エセナ大田(大森駅周辺)

講 師 : 梅田 孝太さん(上智大学

テーマ : ニーチェ道徳の系譜学』復讐について

参加人数: 13人

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参加者のコメント

・梅田さんのお話しやコメント、参加者のみなさんのご意見を聞くことができて面白かった。

・色々な考え方に触れるのが良かった。

・哲学者のことを何も知らずに参加させてもらった。自分が刺激される発言が多々あり、有意義な時間になりました。

・梅田さんの「超人」のとらえ方はクールだなと思った。

・「意志の否定」についてもう少し話したかったです。

ニーチェを研究する人が研究者であって、愛好家ではないとおっしゃったことが興味深かった。

・初参加だったが、参加者の熱意があるなと思った。梅田先生の声がいい。

・大勢の方がご発言して、テーマについて、いろいろなご意見、ニーチェの考えが伺えて大変面白かった。

・梅田先生のプリントが非常にわかりやすく、良かった。

・参加者の話から色々考えることができて楽しかった。

 

参加者からリクエストのあった哲学者・本・テーマ

アリストテレス形而上学

ギリシア哲学

ポストモダン

ショーペンハウアー『自殺について』

 

★概要

満足度、難易度、参加費の3項目はばらつきが少なく高水準で、レベルの高い回だった。

 

感想の多くに、参加者の意見交換に関する評価が見られたことが示す通り、今回は最近のテツドクにしては珍しく、後半部分が先生への質疑応答で終わらず、参加者同士の対話がちゃんとできていた。

 

時間配分が適切であったことに加え、テーマ「復讐について」が身近に引き寄せて考えやすい題材だった点も対話が活発化した原因だったかもしれない。

 

なお、今回は20代と60代4以上の参加者がゼロと世代間のばらつきが少なかった。

こうした環境も対話のしやすい雰囲気づくりに貢献したと考えられる。

 

対話がうまくいくかどうかは、上に挙げた条件以外にも、もともと参加者の会への動機(先生の解説を聞きに来るスタンスの参加者が多いと対話は成立しにくい)にもかかってくるので、どうしても不確定要素は避けられないだろう。

 

運営側としては、対話を促す仕掛けは作れても、誘導することはできない(しすべきではない)。

 

進行の流れにまかせつつ、哲学的テーマと日常感覚をひっかける工夫ができればよいのではないか、と思う。

 

 

 

2018年11月3日 アーレント『活動的生』6回目

日 時 : 2018年11月3日 14時~17時

場 所 : 大田区民会館

講 師 : 三浦 隆宏さん(椙山女子大学)

テーマ : アーレント『活動的生』より「行為」について

参加人数 : 10名

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参加者コメント(抜粋)

・少し話が長いかな、と思った。

・古田さんのインタビューを読んで、すごく同意した。私は常套句がいやでしょうがない。

・もう少し話し合えたらよかった。

・もっと対話になると面白かったと思う。

・とても楽しかった。

 

参加者からリクエストのあった哲学者・本・テーマ

古代ギリシア哲学

ハイデガー(2名)

・ショウペンハウエル『自殺について』

 

★概要

当初の予定時間は14時から16時までであったが、会場が17時まで借りれたので、17時まで使用できた。

結果的にいつもより1時間多い、実質3時間のテツドクになった。

 

『活動的生』のなかでも「行為」の章は重要な部分ということもあり、参加資料を含めてテキスト類が豊富で、3時間でもカバーしきれない内容となった。

 

時間配分としては、講義の部分が厚めで、対話にはあまり入り込めなかったので、コメントでその点について不満を述べる人が見られた。

 

講義内容を解りやすくするため新聞の切り抜きの資料が配布されるなど工夫が凝らされたが、内容を「易しかった」と評価する人もいれば「難しかった」と評価する人もいて、理解度には幅がみられた。

 

適正な難易度への調整は参加者の力によって変わってくるところがあるので、正解はないかもしれない。

 

対話がほとんどできなくて、質疑応答に終始してしまうスタイルは今回に限らず、最近よく見られる傾向だが、今回の参加者は対話を期待していた人が多かったせいか、その点に関しての不満がみられた。

 

 

 

 





 

 

2018年9月15日 ライプニッツ「保険論」 備えあれば憂いなし

日 時 : 2018年9月15日 15時~17時

場 所 : アーキシップライブラリー&カフェ(横浜・関内)

講 師 : 佐々木 能章さん(東京女子大学

テーマ : ライプニッツの『保険論』を読む

参加人数 : 8名

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参加者のコメント(抜粋)

ライプニッツはどこか良い人という印象があったが、その通りだと思った。

ライプニッツのことはほとんど知らなかったので、勉強になった。

ライプニッツの多面性についてその一端を理解できた。

・実践的なテーマでわかりやすく、面白かった。

 

参加者からリクエストのあった哲学者・本・テーマ

・カント

アリストテレス形而上学

 

★概要

テーマ「保険論」が哲学対話の題材としては変化球だったことと、開催日が3連休の初日であったこと、また開催地が横浜だったこともあってか、参加者が少人数だった。

 

逆に、少人数だったのが幸いしてか、満足度は高かった。

 

テーマが実際的なものであったためか、満足度のわりにコメントの厚みがあまりなく、参加者への知的刺激の熱量はさほど感じられなかった。

 

参加者の年齢層が30,40,50代と中年世代に限定されており、若年層、年配層の参加がなかった。

 

これは過去開催回でも、ヘーゲルの3回目と今回だけの参加者年齢構成であり、テーマの訴求層が限定的であったことを示唆している。

 

今回は若干、対話の時間が短くなってしまった。

哲学と保険論という接続しにくいテーマの設定と講義・対話の相性を考えると、結果的に講義部分の時間が多くなったのは、仕方がなかったともいえる。

 

2018年8月5日 西田幾多郎「善の研究」3回目

日 時: 2018年8月5日 15時~17時30分

場 所: 大田区民会館

講 師: 大熊 玄さん(立教大学

テーマ: 人格とは何か

参加人数: 19名

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参加者のコメント(抜粋)

・西田は非常に難しいと感じた。ですが、先生のお話が面白く、今後も勉強していきたいと思った。

・哲学と対話ができる良い機会だった。今後も学んでいきたい。

・今回の30分延長でちょうどよいと思った。

・善の意志の発展完成という話にユング曼陀羅の個性化過程を想起した。

・多くの人から活発に意見が出て、自分なりに勉強になった。論点が多く、もっと時間があればよいと思った。

・知的な自由は貴重。

・専門家の話を聞く機会は貴重だった。

・テーマで話すのは面白かった。テキストテーマだと難しい話が好きな人の独壇場となる。

・先生が素晴らしく、内容が腑に落ちた。

・口語訳で解説してくれたので、理解が深まった。

 

参加者からリクエストのあった哲学者・本・テーマ

西田幾多郎(3名)

実存主義

アリストテレス形而上学

九鬼周造

・新しい哲学

 

★概要

参加人数が多かったにもかかわらず、参加者の満足度は非常に高く、充実した内容だった。

 

会場の関係により、いつも(2時間)より長い時間(2時間30分)を使えたので、対話にさく時間を長くとることができた。

この構成が、内容の充実度に反映した面はあるだろう。

 

今後取り上げてもらいたい哲学者のアンケート欄でも、西田幾多郎が3名と今回の続きに期待した参加者がみられたことから、今回の内容が参加者の学びの意欲を刺激したものであったと推測できる。

 

テーマは難解であったものの、講師の日常生活体験とリンクさせつつ西田哲学を解説するスタイルがわかりやすく感じさせたのではないか。

 

参加費が割安だという評価も多くみられた。

 

評価点の多くの面で時間延長が功を奏したと思われる。